本作は「スタートレック ディスカバリー」やその他「スタートレック」シリーズに関連するテーマとキャラクターを深く掘り下げていく、オムニバス形式のショートドラマである。「スタートレック ディスカバリー」を観ているファンの方々ならご存知のティリーとサルー、ハリー・マッドがそれぞれ主人公となっている3話と、本作で新しく登場するクラフトを中心に描く1話の全4話構成となっている。第1話「逃亡者」では、ザヒア星の女の子、ポーの故郷での話を聞くうちにティリーの心境にも変化が訪れ、2人のやり取りに観ている方も励まされる物語となっている。第2話の主人公は、初登場のクラフト。兵士であるクラフトは、敵から奪った脱出ポッドで宇宙を彷徨っていたが、突如意識を失い危険な状態に陥る。そこでクラフトを救うのは、ディスカバリーのコンピューター、ゾーラ。1000年もの間人間の帰りを待つゾーラは、ギリシャ神話でオデュッセウスを引き留めたカリプソのように、クラフトを優しくもてなして引き留めようとする。ゾーラの必死に引き留めようとする姿に、切ない気持ちになる。コンピューターと人間が心を通わせる、まるで近未来を予測しているようなストーリーでもあり、「スタートレック」シリーズらしさを感じさせるストーリーだ。第3話は、第2話とはまた違う、胸が締め付けられるような切なさを感じさせる物語だ。主人公は「スタートレック ディスカバリー」でも何かと登場する、ケルピアン人のサルー。サルーがUSSシンジョウの乗員になる前を描く。カミナー星のケルピアン人は、風習としてベウルという種族に“収穫”と称して生贄を捧げてきた。その儀式を司る司祭のアラダーを父に持つサルーだが、サルーにはその風習が受け入れられなかった。そんなサルーの葛藤を描くのだが、サルーやケルピアン人の境遇を思うとつい涙が出る。と、ここまで3話において感動のストーリーを描いているのだが、それが一変するのがハリー・マッド主人公の第4話。30件の密輸罪、20件の殺人未遂罪、1件の君主暗殺未遂、盗品の輸送、宇宙クジラの腹への侵入など多くの罪で惑星連邦の賞金首になっているハリー・マッドは、賞金稼ぎたちに狙われている。ある日、正体不明の異星人に捕まったマッドは、テラライトのテブリンに売り飛ばされる。マッドは媚びたり、嘘を並べたりと巧みな話術でテブリンを言いくるめようとするのだが、結局マッドは連邦船へ連行される。そこで待ち受ける予想外な出来事とは……? 1話10~15分間という短さにも関わらず、既に「スタートレック」シリーズを観ているファンにとっても、これから見始める人にとっても存分に楽しめる作品となっている。本国アメリカでは、2019年10月5日から、さらに5話の配信がスタートしており、その人気の高さが伺える。