ハリウッドの映画業界を舞台にスターへの階段を駆け上がる女子大生のシンデレラ・ストーリーを描く「FAMOUS IN LOVE」。主人公ペイジ・タウンセンを中心とした、先の読めないハラハラどきどきの恋の三角関係もこの作品の見どころ。
そんな主人公ペイジを巡ってライバル同士となるキャストの日本語吹替えを担当している、下野紘さん(ジェイク・ソルト役)と梶裕貴さん(レイナー・デボン役)のお二人に、ご自身が演じているキャラクターや役作り、作品の魅力などをお聞きしました。
梶:僕が演じるレイナーは甘いマスク、巧みな会話術など、女性を惹きつける要素がたくさんある男性です。その上、お芝居もうまくて、母親のニーナが映画プロデューサーでもあるので、ハリウッドにおける立ち位置を若くして確立しているようなところがあります。でも、その分、女癖が悪かったり、アルコール依存症だったりというトラブルも抱えていて、こういったドラマには欠かせない役どころです。実はレイナーはだんだん印象が変わっていくキャラクターでもあるんです。ドラマが進んでいくにつれて、彼の中のピュアな部分、孤独を抱えている部分、子供っぽい部分などが見えてくるので、そこが注目ポイントかなと思います。
下野:ジェイクはある意味、レイナーとは真逆の存在かなと思います。彼自身、監督志望で脚本を書いたり、自分の舞台を演出したりしています。でも、どこか報われずにいる部分もあり、ペイジとはお互い気になる存在でありつつも一歩を踏み出せずにいます。だから、物語の中ではもっとこういうふうにしておけば良かったのにと思うようなことが多かったりしますね。スタートから我々以外にもいろんなキャラクターが登場しますけど、一人の女の子の劇的な変化とともに、周りのキャラクターもどんどん変化していって、最終的にどうなるのか本当に見当がつかない感じになっていきます。だから、ジェイクもどうなっていってしまうのか気になります。
梶:海外ドラマに登場する役者さんの体つきは日本人と骨格からして違うので、体の大きさも意識しますね。それから体の動きや表情を意識するのは当然なんですけど、それ以上に、“吹き替えである意味”というのを自分たちで作り出せたらなという思いがあります。だから、全体のキャラクターのバランスを考えたり、僕であればレイナーの心情をそのシーンごとに汲み取ったりして、アフレコに臨ませていただいています。実際に現場に入った第1話の演出では、「感情をもうちょっと出してほしい」「子供っぽく悪ぶっているような面もこれから出てくるから、そういうところを意識してほしい」というふうに言われて、僕が思っていたよりも少し若め、少し少年の要素をミックスしたような入口になりました。それ以降はうまいことすり合わせができて、アフレコが進むうちにそういった部分も含めて自分の中でいい具合に、難しく意識しすぎない感じで演じられるようになりました。ただ、僕らも台本をいただいて初めて次のエピソードがわかるので、最初はどこまで彼が感情的なのか、誰に対して愛情、憎しみを持っているのか、見えにくかったりして……。
下野:そうだねぇ……。そこは本当にイヤだねぇ(笑)。
梶:でも、観れば観るほど人間味が出てきて(レイナーのことが)好きになるなとは、一視聴者としても思いますね。レイナーに限らず、意外と悪いやつじゃないじゃんと思えるキャラクターがいたり、いい子だと思ったのにそんなことしちゃうんだ、言っちゃうんだというキャラクターがいたり。それが海外ドラマの恋愛モノの面白さなのかなと思います。
下野:僕と比べるとジェイクは体格も違うし、声質も違うし、表情、口調、息遣い、いろいろ自分とは違うんだなというところをものすごく感じつつ、そこを汲み取りながらやっています。僕の場合は演出として「ペイジの良き理解者だから、きつい物言いではなく優しく包み込むように」と言われていたんですけど……話が進めば進むほど、違う面が出てきて悪そうな人がいい面を持っていたり、良さそうな人が状況の変化によって悪い面が出てきたりするので本当に激しいなと思います。毎話毎話、自分がこういうふうになるであろうと予測したのと全然違う反応をキャラクターたちがするんです。ジェイクもペイジと和解したかなと思ったら……みたいなのがあったりするので、その辺は臨機応変に一つずつ状況をしっかり把握していかないとならないなと思っています。
下野:ペイジだったら(笑)!?
梶:まさかの(笑)。
下野:ペイジかぁ……すっごい正直に言っていいですか? どっちもイヤです。
(全員爆笑)
下野:ジョーダンかなぁ。
梶:ジョーダン、いいやつですよね。
下野:ジョーダン、いいやつだよね。
梶:いやぁ、何話の段階かにもよりますね。
下野:そうそう、そうなんだよな。
梶:最初だったら、そりゃジェイクかな。もともとペイジはジェイクに好意をもっているわけですし。(当然、ペイジにとって)レイナーは会ったことない人だし、悪い噂を聞いているわけで。でも、それが第5、6話になってくると、(映画にキャスティングされた)役柄の関係性もありつつレイナーとレッスンや撮影を通して、一緒に時間を過ごすようになるわけです。そこで意外とレイナーに一途な面もあるんだなってわかってきたと思ったら、ジェイクは……。
下野:第1、2話ぐらいにもう出てくるんですけど、男の子って好きな女の子とか目当ての女の子が別の男と仲良くしてたりすると、めっちゃ嫉妬心を抱くじゃないですか。ジェイクはそれがけっこうある子なんだろうなっていう……。
梶:ちょっと女々しい感じ、ってことですか?
下野:そうそう。言い方はあれだけど、そうね、間違ってない(笑)。ジェイクは僕よりも年上なんじゃないかっていう見た目をしてますけど、まだまだ幼いというか。そこで仕事だからっていう割り切りがまだできなかったりする学生なんだろうなっていうふうに思う部分はあります。
梶:……なので、もうちょっと様子を見させてください。
(全員爆笑)
梶:実際は、第1話の冒頭で「レイナーとはなんで別れてしまったんですか?」っていう(記者がペイジに話しかける)セリフがあるので、オチがわかってしまっている切なさがあるんですけど(笑)。何があっても二人は終わっちゃうんだなっていう。だから、そうなるまでにどんなドラマがあるのかなっていう楽しみ方になりますね。
下野:冒頭にレイナーの話は出てくるけど、ジェイクは話題にすらなってないからな。
梶:ジェイクは表側の人間じゃないですからね。
梶:ハリウッドが舞台だけに華やかでおしゃれですよね。彼らが着ている衣装もそうですし、ドラマ自体の演出やカット割り、音楽もおしゃれだなと思います。内容に関しては人間ドラマのドロドロ加減がすごいですよね。日本にはなかなかない刺激的な表現が魅力的かなと思います。
下野:あと、みんな基本的に自分の感情に正直なのが所々出ていますよね。ドラマの中で映画の出演者たちが宣伝写真を撮るシーンがあるんですよ。そこで女性は女性同士で一悶着あり、男性は男性同士で一悶着ある。カメラマンが目の前にいるのに、みんなそれをむき出しにするんです。コミカルに描いているシーンなのかどうか、個人的にはここ面白いなと思って、意外と好きなシーンですね。「みんなもっとちゃんとして!」って思う(笑)。
梶:文化が違うんですよね。
下野:その場でカメラマンがちょっと怒るんですよ。「10分休憩しよう!」って。そういう人間の本性というか、その人自身のパーソナルな感情がむき出しになってる部分が、僕はけっこう好きですね。
梶:下野さんとは長い付き合いで、お互いのパーソナルな部分も知っているので……ジェイクのセリフを聞くと、なんだか「カッコつけてしゃべってるな」って思っちゃいます(笑)。
下野:そうな、そうな、それは思うわ! でも、仕方ない(笑)!
梶:下野さんというか、ジェイクがしゃべるとこそばゆい感じがしますね。
下野:俺自身もまだ慣れてないからね(笑)。
梶:なんでしょう、甥っ子がデビューしました、みたいな。先輩なんですけど(笑)。ジェイクは最初の段階では本当に優しくていいやつ。だから、それが下野さんのイメージにぴったりだなって思ってました、第7話ぐらいまでは。下野さんはずっといいやつのはずなんですけど……途中から変わったりしないですよね(笑)?
下野:わかんないよ(笑)。僕の方も梶くんに対しては、レイナーというキャラクターを表現しようとしている部分があるんだろうなと思いつつ、所々に梶くんが見えるなっていうの、ちょっとだけある。改めてこういう話をするのは恥ずかしいですね。でもね、レイナーはやっぱり梶くんのスターオーラがめちゃ出てるなって……。
梶:あ、これちょっと、下野さん、ふざけはじめてますよ!とりあえず言ってるだけなんで、これから先、話になんの中身もなくなります(笑)。
下野:設定的にレイナーって嫌なやつじゃないですか、最初の方は。でも、梶くんが吹き替えするとそれを感じさせない部分があるなぁって。それは本当に思う。
梶:僕が子供のころから観てきた吹替版というのは、大先輩方の技術でもともとのニュアンスを汲む以上の味付けというか、小さい子供が見ても、この人いい人なんだ、悪い人なんだ、面白い人なんだ、かわいそうな人なんだというのが、すごくわかりやすかったり、その味付けがあるからこそ、その役が印象に残ったり、そういう魅力があったように感じます。だから、求められている空気感、お芝居がありつつ、そこに何か日本の役者が日本の方に楽しんでもらうために上乗せして、もともとのものを壊さずに汚さずに、より面白いものとして受け取ってもらえるものにできればと思いますね。これは作品によっても役によっても違うと思うんですけど。こういったことは、常に吹き替えをやらせていただく上で考えていたいなと思っています。
下野:吹き替えをやると、話し方、表情、動き、感情の変化というものが、我々日本人とは違うんだろうなというのはものすごく感じたりはしていて。だからこそ、向こうの原音を聞くという楽しみ方もあると思いますけど、やっぱり吹き替えにすることによって、より日本人に受け入れてもらいやすいというか、受け取ってもらいやすいというか、そういうふうな手助けの一つとなるのが吹替版の魅力だと思いますね。同時に、作品によりますけど、そこに声優のらしさとか、面白さとかを出せるというのも、吹替版の魅力なのかなと思います。