クリス役のリナ・エスコよ。
このドラマは、とにかくアクションがすごいの。冒頭からすごいアクションの連続だから、それが現場にいる私たちを突き動かす原動力にもなっているわ。監督のジャスティン・リンの存在も大きいわね。彼は「ワイルド・スピード」シリーズや「スター・トレック BEYOND」といったアクション映画を数多く手掛けている人よ。そのためか、現場での監督は本当に冷静なの。どうすればそんなに冷静でいられるのか、不思議だわ。アクションシーンを演じたり、車を吹き飛ばしたりしているのに、彼はすごく冷静なの。きっと慣れているのね。でも監督のおかげで、現場のみんなも冷静な態度で臨めているわ。すごくリラックスした現場だけど、いろんなものが吹き飛んでいる。何日か前には大きなショベルカーが2台吹き飛んでいて、度肝を抜かれたわ。
私が演じるのは、男社会で働くクリスという女性よ。SWATチームの紅一点ね。でもメンバーとは家族のような関係だし、互いに支え合ってもいる。それに彼女は、どんな時でもタフであろうとしているわ。仕事で少しでも自分が劣っていると引け目を感じたり、弱気になったり、女性らしさを見せたり、そういうことはしないようにしているの。チームの仲間とはとても親しいけど、常にガードを上げている状態ね。それに、唯一の女性SWATメンバーという役どころは、私の気持ちを奮い立たせてくれるわ。チャンスがなかったために、女性の進出が遅れている職種というのは少なくないでしょ。だから、手本を示すことが大事だと思ったの。それがこの役を引き受けた一番の理由ね。世界中の女性を勇気づけたいし、男性には違った角度で女性を見てほしい。脚本を読んだ瞬間から、私は彼女に尊敬の念を抱いたんだけど、それは重要なポイントだった。役を引き受けるからには、尊敬できて、共感できる人物でないと、常に全力で取り組めないもの。クリスはロサンゼルス出身だけど、タフな女性よ。
チームである任務に当たっている時に、撃たれそうになったホンドーをクリスが助けるシーンがあるの。ホンドーは"驚いたよ、成長したな"という感じでクリスの顔を見るんだけど、あの瞬間、クリスがチームの本当の一員として認められたように感じたわ。ホンドーがクリスを見た瞬間、彼がクリスに感謝していることが伝わってきて、心の中で勝利を感じたわね。
今は女性たちにとって、追い風が吹いている時代だと思う。だから、それを十分に活用しないとね。単なる流行で終わらせてはいけないし、裾野を広げ続けていかないと、ついえてしまうわ。この作品は、クリスのような女性をヒーローとして描いているの。彼女はSWATの一員として、市民のために高い次元で命を懸けている。この作品を見て、"私もいつか、あんなふうになれるかもしれない"と思う女の子が現れるかもしれない。だから、私は強い女性キャラクターを描くことが重要だと思うし、そういう意味でもクリスはいいキャラクターだわ。
ステファニー・シグマンが私たちの上司を演じているんだけど、彼女はとても強い女性ね。まさにリーダーという感じで、私は好きよ。ドラマでは、仕事以外の部分もきちんと描かれているの。それぞれがいろんなものを抱えているけど、仕事中はすべてが平等に感じられるわ。
ドラマの中でのシェマーは、リーダーのお手本のような人よ。私は好きだわ。シェマーはみんなの人気者で、チームに尽くしてくれている。撮影が始まる前からキャスト同士でグループチャットをやったりして、コンスタントに連絡を取り合っていたの。まだ撮影は始まってないのに、絆のようなものが生まれていたわ。そして射撃訓練やトレーニングを一緒にこなして、絆を強めていったの。だから撮影現場では一体感が感じられて、すごくやりやすかった。みんな同じように感じていたと思う。
武術のトレーニングでは、87Elevenに指導を受けたわ。彼らは「ジョン・ウィック」とか、アクション大作映画の仕事をやっていて、その道ではトップクラスの人たちよ。銃など、あらゆる武器の正確な扱い方を学んだ。視聴者に“この俳優、自分が何をやっているか分かっていないな”と思われたくないしね。トレーニングは1日3時間こなしたわ。今もブラジリアン柔術やマーシャルアーツのトレーニングを1日3時間受けている。私は7年前からボクシングをやっているんだけど、学ぶことは多い。キャストはみんな、すごく真剣よ。それっぽく見えればいいなんて誰も思っていないし、まさに体当たりの演技ね。撮影現場にジムを作ろうって計画もあるくらいよ。そうすれば、一日中トレーニングできるもの。私は一日の終わりに、体が疲れ切っていると感じるのが好きなの。だって肉体的や気持ち的に疲れ切った日は、“今日はいい一日だった”と思えて、ぐっすり眠れるでしょ。ただ、走り回ったり階段を駆け上がったり駆け下りたりするんだけど、SWATの装備は11~13キロくらいあるの。その装備を装着し、主要武器や補助火器やらをすべて持って走らないといけないのよ。でも弱音は吐かなかったし、タフにならなきゃと思った。周りに“リナ、これはできる?”と聞かれたら“できる”と答えたし、できないとは考えもしなかった。ただやるだけ。だから事前にトレーニングを積んでおくことは大事ね。私は2週間半のトレーニングを積んだわ。
私たちは、暴力に満ちた世界に生きているわ。人類は6000年前から戦争しか頭になくて、何度も同じことを繰り返している。だからといって、暴力を美化しているわけじゃない。それが人間というものよ。SWATはヒーローで、市民を助けるために存在している。だから特に今の時代には、とてもタイムリーなドラマね。無実の人が誤って撃たれてしまい、尊重されていないと感じた人々と警察の間に対立が生まれる。ロサンゼルスでは90年代にロドニー・キングの一件が起きたけど、状況は今も変わっていない。でも、このドラマにはホンドーのように人々の声に耳を傾ける警察官がいる。彼はあるべき姿を体現しているし、その姿は見ていて心強く感じるはずよ。