海外ドラマのオーディションはこれまで何十回も受けていて、落ちることも多い中、この「S.W.A.T.」のオーディションに受かって出演することになりました。晴れて出演が決まったときは本当にすごく嬉しかったですね。
シェマーさんをはじめレギュラーキャストの方々、サニー齋藤さん、どの方も優しくて素晴らしい役者さんでしたので、同じ役者として共演できたことをすごく嬉しく思いました。「S.W.A.T.」という作品自体は銃撃戦やアクションが満載のハードボイルドな世界観ですから、視聴者の皆さんはこの先どうなるんだろうと緊張感をもってご覧になると思いますが、現場は和気あいあいとしていて、撮影自体もすごく楽しかったです。皆で力を合わせてドラマを作っていく共同体の一人として、世界レベルのヒット作の現場の空気を吸えたことがとても楽しかったですし、この現場を経験できたことが僕にとってプラスになったというのが率直な感想です。 また、ハリウッド映画「JUKAI─樹海─」に出演したときはセルビアの森の中で1ヶ月撮影し、「クリミナル・マインド 国際捜査班」にゲスト出演したときはLAに宿泊して毎日スタジオやロケに行って撮影しましたが、今回は東京ロケということで、車に乗って着いた撮影場所が上野だったのが新鮮でしたね(笑)。これまで海外作品に出演したときの感じとは違って、パスポートなしで外国に行ったような面白い感覚を味わいました。
サトウという男は情報屋で、台本を読んでみるとカッコいい男ではなくいわゆる"小物"という印象を受けました。そこで、その"小物感"をどういうふうに表現していこうかと考えて、ボディランゲージが横柄で、歩くときも肩で風を切ってガニ股で歩く、衣装もよれているといったサトウのイメージを作り上げていきました。また、そういう人物は自分より強い人にガツンと言われると、一気に従順な態度になったりしますよね。そんなイメージを踏まえて現場では監督ともいろいろお話をさせてもらい、何回かリハーサルをやった結果、「これで行こう」と役が固まりました。
シェマーさんたちとは撮影の合間におしゃべりさせていただいたのですが、とってもしっとりした感じの懐が深い紳士的な方々でした。そういうご本人たちの個性がドラマにも滲み出ているんじゃないかと思いましたね。例えば、シェマーさんが演じるホンドーはすごく強いけれど、心は優しくて自分のコミュニティを大事にしている。そんな役柄とご本人とがマッチしているなぁと一緒に現場を経験させてもらって感じました。
サニー齋藤さんにはすごく良くしていただきました。実は現場でご挨拶したときに初めてサニー齋藤さんのビジネスマンとしての経歴をおうかがいして、すごいなぁと驚いたんです。好奇心が非常に旺盛な方だと思いました。しかも、とても繊細で気遣いのある方で、現場では「小澤くん、今の大丈夫だった?」と、僕のことまで気にかけてフォローしてくださったので、安心感がありましたね。それから、「もうアメリカの現場にも慣れているかもしれないけど、もし今度LAに来ることがあったら何でも相談して。僕も今は日本とアメリカを行ったり来たりしているから、近いうちにご飯でも行こうよ」と気さくに言ってくださいました。僕にとって"頼れるアニキ"のような存在ですね。
僕が出演したシーンを撮影した居酒屋はそれほど狭いお店でもなかったのですが、今回はアメリカと日本のスタッフがいて合わせて相当な人数だったので、全員が入るともう満員電車のようで、外に出ようにも出られないほどでした。アメリカと日本のスタッフのコミュニケーションを取るために通訳を担当する方々もいました。こういう経験は僕にとって初めてで、さすが大きな作品になると関わる人数も増えるんだなと感じました。印象的だったのは、アメリカ側の美術部のスタッフがたまたま居酒屋さんに吊り下げてあった提灯を見て「これいいね!最高だよ! これは外さないでそのまま使おう」と興奮しながら言っていたことです。あのお店には海外の方が思う日本のイメージがあったんでしょうね。そういうのを実際に見聞きしたのも面白い体験になりました。
日本との違いと言えば、やはり言葉が違うことですね。サトウのセリフは日本語が多かったのですが、実際に現場で監督やシェマーさんたちとやり取りするのは英語でした。だから、英語を使う撮影現場にいるのにセリフは日本語を話さなければいけないということで、ちょっと不思議な感覚になりましたね。 苦労したことは、2つの別のシーンをまたいで撮影したことです。前日のアクションシーンの撮影に朝までかかったらしく、僕が登場するシーンの撮影は2時間ほど遅れて始まったんです。そこで時間が押しているということで、サトウが情報を提供する事件の前と事件が解決した後、物事の始まりと終わりのシーンを同時に半分ずつアングルを変えて撮っていくことになりました。こういう撮り方は初めてだったので、演じる方としては大変で頭がごちゃごちゃになりましたね(笑)。
僕の登場する居酒屋シーンをぜひ見ていただきたいですし、福島リラさんが女子プロレスラーに扮しているアクションシーンやホテルのルーフトップでの銃撃戦は、制作費においても演出においてもなかなか日本ではできないような規模の大きな撮影で迫力に満ちたシーンになっているので注目していただきたいですね。それから、何と言っても「S.W.A.T.」が日本までロケに来てくれたこと、これが大きな見どころです。すごくありがたいことですし、こうした規模の大きな撮影に日本人スタッフが参加できたことにも大きな意味があったと思います。
10歳ぐらいの頃、ボストンでスティーヴン・スピルバーグ監督が父(小澤征爾)のコンサートに来てくれたことがあったんです。コンサートが終わって楽屋でスピルバーグ監督に会ったときに、当時大ヒットしていた"『E.T.』の人"と聞いた僕は、ご本人の前で顔を手でぎゅっとつぶしてE.T.の顔になって(映画のセリフで当時の流行語にもなった)「E.T. phone home」と言うモノマネをしたんです。そうしたら監督はすごく気に入ってくださって、紙に「I loved your E.T. face from the E.T. man(君のE.T.の顔がすごく好きだよ。E.T.の人より)」ってメッセージを添えたサインをくれたんです。それはいまだに自分の部屋に額に入れて飾ってあります。
どんな役柄をやりたいというのではなく、どんな役をやることになるかという"縁"だと思いますね。これからも海外作品のオーディションを受けたいと思いますし、オーディションに受かったらいただいたその役を頑張る。そういったことを積み重ねていくことが自分の道になるのだと思っています。
シーズンを重ねるごとにますます深まっていくホンドーのキャラクター、回を重ねるごとに深まる彼の信念を見ていただき、さらにグレードアップしているアクションを楽しんでいただければと思います。そして、第13話には私、小澤征悦もちょっとだけ"小物な男"として出ていますので、そこにも注目していただければ嬉しいです。
ヘアメイク:岩井マミ(M)