劇的な変化を遂げることになるシーズン8。もちろん内容のことでもあるが、舞台裏でも同様に大きな変化が起きた。それは番組のクリエーターで、初期からショーランナーとして携わってきたシェーン・ブレナンのシーズン8途中での降板が発表されたこと。製作総指揮としては留まるそうだが、自身のプロダクション会社Shane Brennan ProductionsとCBS TV Studiosとの契約延長の関係で、彼は別の番組の開発に専念することになったのだ。だが心配する必要はなく、ショーランナーとしての後任としてまさに相応しい人物が選ばれた。これまで本作で製作総指揮を務め、脚本家としても名を連ねているR・スコット・ゲミルに白羽の矢が立ったのだ。彼は2009年のシリーズ初回から製作総指揮を務めており、シーズン1の第2話から脚本を担当するなど、長年クリエーターとしても「NCIS: LA極秘潜入捜査班」に携わってきたブレーンの一人なのだ。その影響が奏功してなのか、現在本国で放送された13までのシーズン通算302ものエピソードの中で、現時点でもなお「最高のエピソード」と評価されているエピソードが、本シーズン8の中で、3話もリストアップされている。まず1本は、第6話「隣人」。いつものアクションエピソードとは異なり、グレンジャーとディークスという意外な組み合わせの二人が腹を割った会話を交わしたり、その他メンバーがそれぞれの家族との問題に直面するなど、ヒューマンドラマの側面が多く、ホロリとさせられる人気の高いエピソードになっている。そしてもう1本は、第13話の「陰謀」。このエピソードは、チームを危険にさらした内部スパイを巡る3話構成の第1部になっているエピソードで、全メンバーに降りかかる驚愕の展開と、それぞれの人間ドラマとが複雑に絡み合いながら、陰謀というレイヤーも加わった見応えのあるエピソードになっている。その他、シーズン8では、ダニエラ・ルーア扮するケンジーの身にシリーズ全体のトーンを変えてしまうような大きな事件が起きる。だがこれは、ダニエラ・ルーアがプライベートで第二子を出産したタイミングだったため、それを加味してのストーリー展開になったそうだ。この事件をきっかけに、ケンジーとディークスの二人の関係に急展開が訪れるのもシーズン8だ。さらに、プライベートで咽頭がんを患い、惜しまれながら他界してしまったミゲル・フェラー扮するオーウェン・グレンジャーの最後の出演シーズンであることも、シーズン8のエピソードが最高だとして印象づけられる要因だろう。そしてシーズン8のラストを飾る第24話「憎悪」も、前述の2話と共にトップのエピソードとして挙げられている。2016~2017年に放送されたシーズン8の3話が、2022年5月の時点においても「ベスト」として挙げられていることは、いかにシーズン8が充実しているかを物語っている。